2009年12月6日日曜日

Y先生と平山郁夫


右の絵は私の二十歳のころの自画像でY先生の自画像に感化を受けて描いたものだ。その先生の絵はとても深くて 青春の希望に満ちた甘味さと同時に将来に対する不安なのか暗さのあるとても素晴らしい絵だった。やはり二十歳の自画像だ。高校を卒業してからT君と先生の家を訪ねたときその絵を見たのだ。しばらく私たち二人は感動で言葉を失った。Y先生は私たちの高校時代に教わった美術の先生で実に不思議な人だった。無口で物静か 必要な会話は早口でぼそぼそとしゃべる、目を見て話はしない。何かに怒っている様でもあった。美術研究室はいつも僕らがうろうろしていたから、いつも階下の生物研究室に身を寄せていた。先生の絵らしい絵と言えば、研究室の机の上にあった小さなスケッチブックのつつじの花のデッサンぐらいだった。

ただ、Y先生は芸大で平山郁夫と同級生だと言うことは噂でみな知っていた。しかしあの自画像を見て私たちはただならぬ才能を知った。きっと同級の平山郁夫もそのすごさを知ったことだろう。

あのころ先生は47~8歳 平山郁夫は芸大の教授で飛ぶ鳥を落とす勢いだっただろう。今思えば、Y先生の焦燥はなんとなくせん越ながら想像できる。つつじのデッサンだけでなく もっと作品に取り組みたかっただろう。

先日平山郁夫が亡くなった。評価はいろいろだ。激動の60年代から仏教を中心に平和をテーマに描いている。退屈だと思う人もいるかもしれない。しかしアカデミックな生き方としてはこういうものかもしれない。

Y先生は昨年夏故郷の茅野市で個展を開かれた。私はお元気な先生にお会いできたことを喜んだが、

それ以上にうれしかったのは、例の二十歳の自画像を見ることができたことだ。先生は60年も前の作品を大事に額に入れて保存していられるのだ。素晴らしい絵であることは今も同じだ。

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