2009年10月7日水曜日

1975年(二つの原点)


るたん選抜展が今年も開かれるようだ。画廊からの案内状に美術評論家の赤津侃氏の“団体展は「何処から来て何処へ行くのか」”という興味深い文があった。

【75年第一回東京展は新装開館した都美館で日展と隣り合わせて開催された。反権威、反日展、自由出品制、無審査を旗印に、中村正義や針生一郎らを中心とする東京展市民会議が立ち上げた。】

ああなんという時代だったんだろう。私はこの文を読んであの頃のことを思い出していた。3回の芸大受験に失敗し就職をきめた年だった。デッサン重視の受験になんとも出口を見出せなかった。なんかもっと大事な方向があるはずだと頑なに思っていたと思う。芸大の権威と現実に疑問を膨らましていた。かといってどんな絵を描いていいのかもわからなかった。友人と行ったフジテレビギャラリー(曙橋あたりだったか)で、カレルアペルとウェレムデクーニンのフィルムを見てスーっとした気持ちになったのを覚えている。その東京展を見ていれば何か変わっていたかもしれない。

一昨年豊橋市にある“新しい日本画をめざす”星野真吾賞展に出品したが、審査委員長は針生一郎氏であった。その総評で『中村正義氏や星野真吾氏の新しい日本画に対する取り組みに対し、出品作品は総じて問題意識が低い』とのことであった。どう低いのか私には理解できなかったが赤津氏の文に触れてやっとその意味がわかった気がした。それは、私がずーっと抱いている権威に対する不信感や、自分の信じる絵を描くという方向を押さえ込んでしまわなくていいということなのだ。

1 件のコメント: